新型犬型相撲日録

元木村山の前髪

十四日目

この日から遠藤が休場。
十二日目徳勝龍との対戦で、左の足首をねんざしたのだとか。

場内にその旨が発表され、
割の組まれていた松鳳山が相撲をとらずに勝ち名乗りを受ける。
知らなかったお客も多かったらしく、
どよめきと共に若干の怒号、ブーイングも。

新入幕でこれだけお目当てにされる力士も珍しい。
そんな十四日目。



十日目に涙の幕内復帰勝ち越しを決めて以降、三連敗中の豊真将。
十一日目あたりから貼りだした右肩のテーピングを、
今日は背中を通して左肩のほうまで広げている。

痛々しいが、上位を目指すには勝ち越しで満足してはいられない。
玉鷲との対戦。

●玉鷲<西前頭十六・8−6>(よりきり)豊真将<西前頭十三・9−5>○

玉鷲低く出てくる豊真将を突き起こすが、頑としてくずれない豊真将の前傾姿勢。
やがて豊真将逆襲に転じ前へ出れば、玉鷲相手の左腕をつかみとったりに。
豊真将これをよくこらえ、俵に足をかけながら反転、両差しを果たすと、
ぐるっと回り込んで玉鷲を俵の方に置き、そのまま寄り切る。

とったりを残して土俵際から反撃に転じた豊真将。
執念のオーラを出しまくっていた。



関脇の豪栄道はここまでで9勝。
あとひとつ勝って勝ち星を二桁とし、大関挑戦をリスタートさせたい。

●高安<西小結5−9>(おしだし)豪栄道<西関脇10−4>○

互角の立ち合い、突き合いから、
左を差そうとする高安を豪栄道右からおっつけ横向きにし、
さらに左のノド輪でのけぞらせ、押し出す。

豪栄道のいい相撲。
過去1勝6敗と苦手にしている相手を、
安易な引きや投げに走らず、おっつけと出足の正攻法で攻略した。

これで来場所から大関取りだが、
三役の地位で二場所連続の二桁勝利すら未だ無い豪栄道。
いわゆる「三役三場所三十三勝」の三分の一しか実績はない。
まずは来場所が勝負どころか。



今日のメインイベント、
勝てば優勝の白鵬と、
星の差二つで勝っても優勝は限りなく難しいが可能性がないわけでもない稀勢の里。

まあ要するにキセ一矢報いろ、という対戦。

○白鵬<東横綱13−1>(はたきこみ)稀勢の里<東大関10−4>●

時間いっぱい。
互いにさがりを分けた姿勢から見合った格好で、なかなか腰を下ろさない。
やがて根負けしたように稀勢の里がストンと下ろすと、
それを見据えるようなまなざしで白鵬がゆったりと下ろす。

今度は立ち合い、稀勢の里が手をおろせず、嫌う。
いったん立ちあがり審判長に目礼し、ふたたび腰を下ろす。
顔が真っ赤だ。
白鵬は稀勢の里の所作を悠然と後追いするだけ。

立ち合い稀勢の里得意の左四つには組んだ。
先に両回しを引かれたが、下手を切った。自分は上手を取った。前に出る。
しかし横綱に右脇からすくい投げをくらう。
これは残した。体が離れた。左を差そうとするが張り手もまじえて横綱が突いてくる。
それでも下からあてがって反撃、前へ出ようとするが、頭が下がる、足がそろう。
勝機は逃さない横綱、身をひるがえしはたきこむ。
稀勢の里地を這う。



…もう本当に仕切りの心理戦から負けていた稀勢の里。

この二人の対戦。

平成二十二年の九州で連勝記録を止めたあたりからしばらく、二十三年のころは、
離れた形で稀勢の里もわりと分のいい相撲を取っていた。

しかし二十四年に入ったころから、
白鵬が落ち着いて右四つに組みとめ、左四つの稀勢の里はなす術なく敗れるパターンが多くなる。

それが今年二十五年の五月、稀勢の里が得意の左四つを果たし、
惜しくも負けはしたが四つでも白鵬と相撲が取れることを実証。
下半身の安定感やパワーが相当なものになってきた事をうかがわせた。

七月の先場所は白鵬得意の右四つで稀勢の里が勝利。
先場所得意の四つで敗れたことにそのままお返ししてみせたが、
白鵬が脇腹を痛めていたため、ちょっとケチのつく白星だった。

そして今日の敗戦。どう考えたらいいのだろう。
まあまた追々。



これで白鵬は四場所連続、二十七度目の優勝。
あと四つで歴代二位の千代の富士、あと五つで一位の大鵬に追いつく。

大鵬を抜いて新記録を樹立し、白鵬のモチベーションが下がるのを待つ。
それくらいしか国産力士の優勝の芽はないのだろうか。


しかし大喜鵬はどこにいても目立つ。